【新技術】石炭地産地消 ~純国産エネルギーの釧路火力発電所が始動、CCUS技術の実証実験~

環境管理・環境対策

 

【新技術】石炭地産地消 ~純国産エネルギーの釧路火力発電所が始動、CCUS技術の実証実験~

 

2020年12月に、国内唯一の坑内掘り炭鉱がある北海道釧路市で、釧路コールマイン(KCM、釧路市)の石炭を使う釧路火力発電所(出力112,000kW)が営業運転を開始しました。

 

この発電プラントの概要や意義、将来に向けたCCUS(二酸化炭素の回収・有効利用・貯留技術)などについて紹介します。

 

 

1.発電プラントの概要

 

名称

釧路火力発電所

所在地

北海道釧路市興津一丁目13番1号

発電事業者

株式会社釧路火力発電所

発電形式

循環流動層(CFB)ボイラ+再熱復水蒸気タービン発電機

出力

112,000kW(発電端出力)

燃料

石炭、木質バイオマス

所有者

株式会社釧路火力発電所(本社:北海道釧路市)

施工者

JFEエンジニアリング株式会社(本社:東京都千代田区)

 

(1)高効率 循環流動層(CFB)ボイラの採用

 

循環流動層(Circulating Fluidized Bed)。燃料及び流動媒体をボイラ内部で循環させながら燃焼する方式。幅広い燃料適合性が特長で、複数燃料の混焼に適しています。

 

(2)循環流動層ボイラのシステム図

 

(3)循環流動層ボイラの概要

 

a.高い燃焼効率の向上を実現

 

循環流動層(CFB:Circulating Fluidized Bed)ボイラは、流動床(BFB:Bubbling Fluidized Bed)ボイラよりも火炉(コンバスタ)内のガス速度(空塔速度)を上げ、粒子・ガスの混合を活発化し、燃焼反応の向上をはかったボイラです。また、火炉から飛び出す流動砂および燃料をサイクロンで捕集し、再び火炉へ循環させることにより燃焼効率の向上をはかっています。

 

b.多種多様な燃料に対応

 

循環流動層(CFB:Circulating Fluidized Bed)ボイラは、瀝青炭、褐炭、無煙炭、石油コークス、木質バイオマス、製紙スラッジ、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)、廃タイヤなど広範な燃料を燃焼可能であり、かつ高い燃焼効率を有します。

 

c.低い環境負荷

 

火炉内での燃焼温度は、一般的なボイラ1,400~1,500℃であるのに対し、CFBでは800~900℃と低いため、サーマルNOx(燃焼温度依存の発生NOx)の生成量を抑制できます。さらに二段燃焼の採用により、NOx発生量は100ppm以下とすることが可能です。

 

 

(4)再熱復水蒸気タービン発電機のシステム図

 

2.純国産エネルギーである火力発電所の意義

 

(1)エネルギーセキュリティー

 

二酸化炭素の排出で石炭火力発電所は、既存メディアなどから叩かれていますが、CO2よりもエネルギーセキュリティーの方が大事です。

 

日本のエネルギー自給率は、たった11.8%(2018年)であり世界の先進国の中で最低の水準です。 日本は、エネルギー源のほとんどを、お金を払って外国から輸入し、電力をまかなっている状況なのです。

 

日本の発電電力量の割合として、火力発電が82%(2017年、天然ガス40%、石炭33%、石油9%)も占めており、その燃料のほとんどが、石炭を含めて海外からの輸入で成り立っています。

 

海外から燃料を使って運んでくるよりも、国内で掘り起し近くの発電所でボイラに使った方がCO2の排出を伴う運送エネルギーや運搬コストもかかりません。

 

 

(2)地球温暖化?

 

そもそも二酸化炭素は、稲(イネ)などの植物の成長になくてはならないものであり、地球温暖化の信憑性についても明らかになっていません。

 

たとえ仮に地球温暖化が進んだとしても、海に囲まれた日本に影響が出る前に、内陸地でありCO2を世界で最も排出している中国共産党支配地域や世界で2番目にCO2排出量が多い米国の内陸部で温暖化の影響が出始めてから、日本で検討してもいいレベルのどうでもよい話です。

 

(3)電力の安定運転に貢献

 

太陽光や風力などの再生可能エネルギーに注目が集まっていますが、それらはエネルギー密度が小さく広範囲な土地が必要だったり、天候任せであるため、電力の需要と供給のバランス維持には全く貢献していません。

 

そのバランスを何で補っているかといえば、主に火力発電所の調整力で補っているのが、実態です。

そういった意味でも、ブラックアウトを経験した北海道にとって、釧路火力発電所の緊急時の貢献度は期待できるものといえます。

 

 

(4)トレードオフの観点より

 

 

二酸化炭素の排出問題やSDGsなど、流行りで、あれもこれもというよりも、本質的に大事な優先順位をよく考えてほしい。

 

日本は、現在、停電も少なく、電力供給が安定しているため、贅沢な状態に慣れ過ぎていて電気のありがたみが薄れていますが、これが将来的に続くとは言い切れません。

 

現在の電力安定供給は、戦後の電力事業体制を構築し「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門ほか、民間事業者の先人が構築してきたものであり、経済産業省や環境省で自分の保身ばかり考える小役人が構築したものではありません。

 

 

ひとたび世界的な戦争や中国共産党(中共)による南シナ海や東シナ海の不法占拠により海峡封鎖が発生すれば、石油や天然ガスの輸入が困難な状況にもなりかねず、日本の電力不足が深刻化する事態に陥ります。
(こういった意味でも沖縄県尖閣列島の防衛や台湾の中共支配阻止は、エネルギーセキュリティー上で重要であり必須です。尖閣列島海域には、中共の指示で不法船が毎日領海侵犯しています。それにも拘わらず中共の王毅外交課長が、日本での共同記者会見で、「日本漁船が尖閣海域に入ったら攻撃する」とのおかしなコメントに対して、茂木外相は、反論も出来ず、「シェイシェイ」と握手している始末。この茂木という男は何を考えて外務大臣や政治家をやっているのか。茂木という男は、多少英語ができるからといって自分を賢い人間だと思い込み、いい気になっており、政治家で最も重要な国家観と瞬発力を持ち合わせていない中共子飼いの媚中派で三流政治屋でしかない。たるんでいる外務省の組織自体の考え方や対応についても茂木と同様である)

 

多少話は横道にそれましたが、以上より、優先度は圧倒的に、

 

エネルギーセキュリティー、電力安定供給 >> 二酸化炭素の排出抑制

 

であり、

 

CO2の排出抑制よりも、エネリギーセキュリティーや電力安定供給の方が重要で優先順位が高いのは明らかです。

 

 

3.釧路火力発電所の工夫

 

(1)環境への配慮

 

・炭鉱の地下水を火力発電所の冷却水に使っている。

 

・火力発電所の温排水を選炭工場で再利用している。

 

・燃料は、石炭とバイオマスの混合燃焼型で、燃料の3割はパームヤシ殻と木質ペレットを使い、実質的なCO2排出量を抑えている。

 

 

(2)廃棄物の有効活用

 

・発電後に生じる石炭灰は、炭鉱坑道の充填に使い、地盤沈下やガス漏出の防止に役立てている。

 

・石炭を燃焼させた際に発生するCO2と石炭灰を共に活用する。

 

・石炭灰に含まれる酸化カルシウムと酸化マグネシウムにCO2 を結合させて、鉱物のように固い炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを生成し、掘り終った古い坑道に埋めて穴を塞ぎます。

 

・これによりCO2の排出削減とともに、坑道内を埋め戻すことで保安対策の強化に繋げる取組みです。

 

・この取組みは、CO2を素材として再利用する「カーボンリサイクル」と呼ばれています。

 

 

4.将来に向けたCCUS(二酸化炭素の回収・有効利用・貯留技術)

 

(1)二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)とは

 

火力発電所等からの排ガス中の二酸化炭素(Carbon dioxide)を分離・回収(Capture)し、有効利用(Utilization)、又は地下へ貯留(Storage)する技術

 

図1.CCUS概要図

 

(2)CCS実証実験

 

釧路コールマイン(KCS)では、2021年度から、火力発電所から出る二酸化炭素(CO2)を坑内に埋め戻す実証実験を始める計画です。

 

国内では、CO2を回収し、地中に閉じ込める「CCS」の実証実験は、北海道の苫小牧で行われており、そこでは2021年度から火力発電所から出たCO2を苫小牧まで海上運搬する実証実験がスタートするなどの研究開発が進んでいます。

 

苫小牧CCSの件は、過去記事の「【新技術】CCS技術について ~二酸化炭素(CO2)回収・貯留プロジェクトの紹介~」があり、末尾に関連記事としてリンクを貼りましたので、興味のある方は、参照下さい。

 

KCSでは、CO2の坑内埋戻し技術の海外移転を目指しています。

 

 

5.まとめ(意見)

 

・釧路火力発電所は、石炭火力であり、CO2排出の抑制問題として否定的な意見がありますが、国内では稀な純国産エネルギーの火力発電所であるという点や需給状況に合わせた出力調整が可能な火力発電所であるという点を既存メディアや反対派は、抜けているのではないかと指摘します。

 

・菅義偉首相は、2020年10月の所信表明で、温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げ、非効率な石炭火力発電所を段階的に縮小するフェードアウト議論が始まっています。

 

・個人的に、非効率な発電所のフェードアウトは、経年もあり自然な流れで進むものと考えますが、自動車産業において高性能なエンジン造りの技術力があり、火力発電機器の製造において高効率でトップランナーを走ってきた日本の技術力を捨ててまでも、CO2ゼロを実現すべきものなのか。菅義偉首相の国家観や政治的センスの無さには、疑問を呈します。立憲民主などの野党は、全く論外ですが・・・。

 

・「2050年CO2排出ゼロ」の実現に向けた鍵の一つとして、CO2を素材として再利用する「カーボンリサイクル」があり、石炭灰とCO2を結合させて、坑道の穴埋め充填剤に有効活用するKCMの取組みは、素晴らしい試みと考えます。また、CCS(CO2回収・貯留)の実証実験の計画を含めたCCUS技術へのKCMの取組みについて、今後も注目していきたい。

 

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